リスティング広告をみているウェブマーケティング担当の方ですと、自社のサイトにいくらくらいの費用をかけて、何人のユーザーを連れてきているのかという視点で、広告の成果を見ている方も多いのではないでしょうか。
そんな時に指標となるのが広告のクリック単価:CPCです。広告が1回クリックされるたびに発生する広告費用がこのクリック単価になるわけですが、そのクリック単価は、全ての広告で一律に決まっているわけではなく、同一の広告アカウント内の広告でも、それぞれクリック単価は異なっています。
「競合が入札を強めていてCPCが高騰してしまっている」
「掲載順位を落とさずにクリック単価を下げる方法はないのか」
こんな風に悩まれている方は、リスティング広告のクリック単価の決定方法がどのように決定されるかを理解することで、その解決の糸口を見つけることができるかもしれません。
是非、最後まで読んでいただければと思います。
【目次】
- リスティング広告はどのように掲載順位を決めているのか
- 掲載順位を決める《 広告ランク 》って何?
- クリック単価の決定の仕方
- 《 広告ランク 》による掲載順位の例
- 《 広告ランク 》決定後のクリック単価の算出の例
- 《 広告ランク 》には最低基準があるのを知っていましたか?
- 掲載順位を落とさずにクリック単価をさげるには
- まとめ
①リスティング広告はどのように掲載順位を決めているのか
クリック単価の決定方法を理解するためには、まず、リスティング広告が広告枠に掲載されるまでの仕組みを理解する必要があります。リスティング広告はクリック単価の入札方式によって決まっていると何となく理解されている方も多いかと思いますが、リスティング広告の掲載順位は入札単価のみで決まっているわけではありません。また同様に、入札単価がそのままクリック単価となるわけでもありません。
リスティング広告などの運用型広告に代表されるインターネット広告の多くは、オークション形式で広告枠を配信する掲載枠を決定しています。この広告オークションでは、広告ごとで《広告ランク》が算出され、その《広告ランク》の高い順から、掲載順位が1位、2位、3位、、、と割り振られていきます。
・掲載順位を決める広告ランクって何?
広告のオークションは、広告の表示機会が発生するたびに行われます。そのたびに《広告ランク》は算出されるため、同じ広告であったとしても、毎回同じ《広告ランク》となるわけではありません。
※同じ広告であっても、毎回、クリック単価が異なるのはこのためです。
広告ランクは下記のような式で算出されています。
【式】
広告ランク = 入札単価 × 広告の品質
この式からも分かるように、入札単価は《広告ランク》を決定する要因の一つにすぎません。広告ランクを決定するには、もう一つ、広告の品質という要素が関わってきます。
広告の品質とは、検索ユーザーにとって有益な情報を提供しているかという観点から算出されている指標です。この数値は媒体社が独自のロジックで算出している評価指標です。この広告の品質の高い広告は、検索ユーザーが求めている情報に対して関心、関連性、利便性が高い広告ということになります。
⇒《 広告ランク 》について、もっと詳しく知りたい方はコチラを参照ください。
リスティング広告の掲載順位を決める《広告ランク》ってなに?
②クリック単価の決定の仕方
・《広告ランク》による掲載順位の例
広告の掲載順位は《広告ランク》の高い順から割り振られていくと、簡単にご説明いたしましたが、ここからは、その《広告ランク》と掲載順位をもとに、クリック単価がどのように決定されているのかを見ていきたいと思います。
広告ランクを算出する式は下記の通りです。
【式】
広告ランク = 入札単価 × 広告の品質
※広告の品質は、厳密にいうと開示されている数値ではないのですが、ここでは話を簡単にするために、広告アカウント上で確認できる品質スコアの数値として考えていきたいと思います。
では、A社、B社、C社の3人の広告主が広告のオークションに参加しているケースを見ていきます。
【ケースi】
A社 入札単価: 90円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):450
B社 入札単価: 60円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):300
C社 入札単価: 40円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):200
広告の掲載順位は広告ランクの高い順から、高い掲載順位を割り振られていきます。ですので、この【ケースi】では
1位:A社
2位:B社
3位:C社
という順に広告が掲載されます。
【ケースi】の場合、品質スコアは各社同じなので、単純に入札単価が高い方の広告ランクが高くなっています。
では、この【ケースi】の場合は、どのようにクリック単価が決定されているのでしょうか。
・広告ランク決定後のクリック単価の算出の例
冒頭で紹介しましたように、リスティング広告のクリック単価は入札単価のみで決定しているわけではありません。ですので、
【ケースi】
A社 入札単価: 90円 クリック単価:90円
B社 入札単価: 60円 クリック単価:60円
C社 入札単価: 40円 クリック単価:40円
という形にはなりません。
実際に支払う1クリックあたりの費用は、1つ下の広告ランクを上回るために最低限必要な金額となります。これは通貨の最小単位で計算されますので、日本では1円ごとに算出されることになります。
【ケースi】では、A社の《広告ランク》は450、B社の《広告ランク》は300となっていました。掲載順位1位のA社が、1つ下の掲載順位にあるB社の広告ランクを上回るために必要な広告ランクは301となります。つまり301以上の広告ランクを出すために必要な価格が実際に発生する費用となります。
【A社のケース】
A社 入札単価: 90円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):450
広告ランク:301以上にするために必要な入札単価を逆算する式は
最低限必要な入札単価 = 最低限必要な広告ランク ÷ 品質スコア
となりますので、
最低限必要な入札単価 = 301 ÷ 5 = 60.2円
となります。最低限必要な入札単価は通貨の最小単位ごとになりますので、61円が実際に発生する1クリック当たりの費用となります。
同様に、B社のケースでも1つ下の掲載順位の広告ランクから実際に発生するクリック単価が算出されていきます。
・《広告ランク》には最低基準があるのを知っていましたか?
ここまでの説明で、もしかすると疑問を持たれた方もいるかもしれません。
「下位に広告が掲載されていない場合もあるが、その場合はどうなっているのだろうか・・・」
実は、広告が掲載されるためには広告ランクの最低基準を満たす必要があります。つまり、広告枠に掲載されている唯一の広告で、下位に広告が掲載されていない場合でも、この最低基準を満たす必要があるということです。この広告ランクの最低基準は、業界や検索ユーザーの属性などにより調整されています。
先ほどの【ケースi】を見てみたいと思います。
【ケースi】
A社 入札単価: 90円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):450
B社 入札単価: 60円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):300
C社 入札単価: 40円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):200
この場合に、実は広告ランクの最低基準が250として設けられていたとします。そうすると、C社の広告ランクは200になっていますので、広告の最低基準を満たすことが出来ません。そのため、C社は広告を掲載することが出来なくなります。
そこで、B社が実際に支払うクリックの費用はどのように算出されるのでしょうか。
【B社のケース】
B社 入札単価: 60円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):300
広告ランクの最低基準:250以上にするために必要な入札単価を逆算する式は
最低限必要な入札単価 = 最低限必要な広告ランク ÷ 品質スコア
となりますので、
最低限必要な入札単価 = 250 ÷ 5 = 50円
となります。B社が実際に支払うクリック単価は50円ということになります。この場合、1つ下のC社の広告ランクを上回るために必要な金額は41円になりますが、実際に支払うクリック単価は41円にはならず、50円になることに注意しておいてください。
広告ランクの最低基準がある場合は、この広告ランクの最低基準が下限の数値となります。
③掲載順位を落とさずにクリック単価をさげるには
ここまで見てきましたように広告の掲載順位は《広告ランク》によって決定されています。
【式】
広告ランク = 入札単価 × 広告の品質
この式からも分かるように、広告の品質を上げることが出来れば、入札単価を上げずに《広告ランク》を高めることが出来ます。【ケースi】では各社とも広告の品質(品質スコア)を同一にしてみてきましたが、ここからは、広告の品質が異なる場合に、クリック単価にどのような影響が出るのかを見てみたいと思います。
【ケースii】
A社 入札単価: 90円 品質スコア: 9 広告ランク(入札単価×品質スコア):810
B社 入札単価: 60円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):300
C社 入札単価: 40円 品質スコア: 5 広告ランク(入札単価×品質スコア):200
【ケースi】のA社の品質スコアは5でしたが、A社の品質スコアが改善して【ケースii】では9になったとします。この場合、《広告ランク》による掲載順位は変わりませんので、【ケースi】と同じく
1位:A社
2位:B社
3位:C社
という順に広告が掲載されます。
ではこの場合、A社が実際に支払うクリックの費用はどのように変化しているのでしょうか。
【A社のケース ii】
B社の広告ランク(301)を上回るために必要な入札単価を逆算する式は
最低限必要な入札単価 = 最低限必要な広告ランク ÷ 品質スコア
となりますので、
最低限必要な入札単価 = 301 ÷ 9 = 33.4円
となります。【ケース ii】では34円が実際に支払うクリックの費用ということになります。【ケース i】でも【ケース ii】でも、A社の掲載順位は1位のままですが、【ケース i】では、実際に支払うクリックの費用は61円になっていましたが、【ケース ii】では34円まで低下しています。
このように、広告の品質を高めることによって、掲載順位を落とすことなく、クリック単価を下げることが可能となります。
④まとめ
いかがでしたでしょうか。リスティング広告におけるクリック単価の決定方法についてまとめさせていただきました。
リスティング広告では、オークション方式により広告の掲載順位が決定されていますが、実際に支払うクリック単価は入札単価のみで決定されているわけではないことが、理解していただけたかと思います。
ビックワードで広告を出稿している場合、競合との入札合戦になってしまうことも多々ありますが、広告の品質を改善していくことで、広告の掲載順位を落とすことなく、クリック単価を下げることが出来るようになります。
「競合が入札を強めていてCPCが高騰してしまっている」
「掲載順位を落とさずにクリック単価を下げる方法はないのか」
このように悩んでしまった際は、是非、クリック単価がどのように決定されているのかを思い出してみてください。きっと競合よりも有利に広告を配信できるためのヒントがあるはずです。
それでも、リスティング広告の改善が難しい場合はお気軽にご相談いただければと思います。