広告とPRの3つの違いは?情報発信プロセスの比較でわかること

皆さんの中で、PRという職業を耳にされた方は多いと思います。英語で「公共との関係」という意味を持つ「Public relations」の略ですが、ピンとこない方は「広報」という言葉に聞き覚えがあるでしょう。マーケティングにおいて広告と比較されることの多いPRですが、この2つの違いを明確にイメージするのが難しいという方は少なくありません。

「え、どっちも同じものじゃないの?」

「情報を流すことはどっちでも出来ることでしょ?」

「無料で情報伝達するのと有料でやるのとでは、何がどう変わるの?」

こういった疑問を抱えたことのある方々に向け、今回は広告とPRの共通点や違いについてお話していきます。

目次

1. 広告とPRの混乱を招く2つの共通点

2. 広告とPRの違い① どうのようにメッセージを構成するのか

3. 広告とPRの違い② 誰がメッセージを発信するのか

4. 広告とPRの違い③ 発信する情報はペイドかノンペイドか

5. まとめ

1. 広告とPRの混乱を招く2つの共通点

まずは広告とPRを似たものだと思ってしまう、2つの共有点に注目しましょう。

♦1. 情報発信の意図

広告業とPR業に共通するのは、情報発信をする意図です。サービスの売り上げを向上するため、新商品を発表するため、ブランドイメージを良くするためなどの目標のためにメディアを駆使して企業が世間に情報を伝えることは、広告とPRのどちらの手段を使っても成し遂げられることです。

♦2. メッセージの受け手を考える

企業が世間に向けて、広告やWeb雑誌などの手段や媒体で情報を発信する際、必ずメッセージの受け手であるターゲット層を設定します。

「20代から30代の男性に発信したい」

「読み手は子持ちなのか」

「どのような趣味・関心ごとを持っているのか」

上記のように正しい層に情報を送れるように、情報の受け手の特徴を明確にする必要があります。

2. 広告とPRの違い① どうのようにメッセージを構成するのか

さて、ここからは広告戦略とPR戦略で異なる点について説明します。まずはその1つである、企業が公衆に出すメッセージの構成に関してお話しします。

♦広告の場合

リスティング広告や電車の中の広告といった手段で消費者や顧客となりえる層にメッセージを伝える際は、そのメッセージを受け取る人たちの共感を得て、かつ行動を促すことが重要になります。

どうしてこういったメッセージ構成をするかというと、広告はPRに比べて商品やサービスの売り上げに直接影響を与えることに向いているからです。

例えば、検索広告から歯磨き粉をより多くの人たちに購入していただけるよう、ネット限定の初回購入価格を設定するとします。こういった場合、広告を見てもらうだけでなく、実際にクリックをしてランディングページにアクセスして商品を買っていただきたいので、広告の見出し文や説明文には

「初回価格!」

「今だけ○○円!」

「歯茎腫れを和らげる!」

といった、「申し込むなら、今じゃないと!」「買うなら、他社じゃなくてこの会社の商品だ!」と思ってもらうよう、商品やサービスの特徴を使って顧客の興味を引き付けます。

商品やサービスの売り上げ向上のため、ターゲット層にいかに共感をしてもらってアクションを起こしてもらうかが、広告のメッセージの主なミッションです。

♦PRの場合

「ターゲット層の行動を引き出す」広告に対し、PRにおけるメッセージ発信はいかに簡潔に、正しく必要な事実を発信出来るかが大切になります。

簡潔で正しい情報発信をする理由は、PRが広告に比べてブランドイメージの確立や向上といった管理に向いているためです。これが大切なのは、ブランドや会社のイメージが良くなければ、そもそも顧客を引き付けることが出来ないからです。

例を挙げるならば、先ほどの歯磨き粉の発売を行う場合です。ここで重要なのは、「商品の効果」「価格」「発売日」といった情報を、派手なキャッチコピーなどを用いずに伝えることです。こういった場合に企業は、「プレスサイト」と呼ばれるインターネット上のページで「プレスリリース」という告知を出すことで、新聞や雑誌といったメディア関係者に情報を流します。メディアは、プレスサイトから情報を得てニュースを発信することが多いですが、記者会見を開いたり、メディアの編集部に直接情報が提供される場合もあります。

ブランドイメージの管理なくして顧客・売り上げは得られないので、以下のような情報をプレスサイトで発表するのもPRの役割です。

・社会貢献のために行っているボランティア活動

・売上や賞の受賞といった、会社としての地位に影響する情報

・新型コロナウイルスのように、社会に影響を及ぼす問題への、会社の対応策

プレスサイト上の情報は一般公開されているので、ぜひお好きなブランドのホームページにアクセスして、リリースの文章や情報を広告で見かけるものと比較してみてください。

上記の内容をまとめると、広告の場合は売り上げを上げるために消費者の行動を引き出すための情報を伝えること、PRの場合はブランドイメージ確立のために必要な事実をシンプルに、正しく伝えることが、世間とのコミュニケーションを図るうえでの違いになります。広告とPRのどちらの手段でも、売り上げやブランドイメージに貢献出来ますが、広告は前者、PRは後者の目的に向いています。

3. 広告とPRの違い② 誰がメッセージを発信するのか

メッセージ構成の他にも、広告とPRとでは、誰がターゲット層にメッセージを発信しているかが変わってきます。

♦広告の場合

広告代理店は、企業が創りあげたメッセージをテレビ、新聞、雑誌、インターネット、ポッドキャストといった媒体の広告枠を用いて、消費者に直接に届けています。有名人を用いたCMなり、派手なデザインのバナーなどをよく目にしますよね。新聞を日ごろから読まれている方は車、本、食べ物など、様々な商品の宣伝を1ページの中で一度に目にすると思います。

♦PRの場合

一方PR代理店は、企業の代わりに、メディアに情報を発信してもらうことを目的としています。例として、新聞や雑誌で見かける社長インタビューやコラム、書籍の紹介などが挙げられます。これらは、企業が発表・提供した情報にメディア編集部が興味を持ち、企業の代わりに世間に向けて公開・掲載しているものです。

つまり、企業が消費者に直接メッセージを伝えるのが広告で、企業に代わって第三者であるメディアに情報を拡散してもらうのがPR活動です。

4. 広告とPRの違い③ 発信する情報はペイドかノンペイドか

広告とPRの違いにおいてもう1つ大事なのが、ターゲット層へのコミュニケーションが、料金を払って行われたかどうかです。

♦広告の場合

広告会社は、情報を発信するためにメディアに料金を払うことでビジネスの目的を達成します。「スマホアプリのダウンロード数を増やす」「新店舗への来客を増やす」などといった目標を達成するために、雑誌の広告スペースを買ったり、検索エンジンに広告を出すといったことで、ターゲット層にメッセージを伝えます。

PRと違い、料金を払って情報発信すると多少のデメリットがあります。広告で売り上げを増やせるだけの予算や、日々変わる広告の運用状況を把握し、さらに予算調整をする必要があります。予算を調整しても、広告の誘導先であるランディングページの構成要素や効果について理解しないと、広告の効果を最大限に発揮出来ません。また、広告で発信される情報はメディアで報道される情報に比べて、世間からの信頼性が弱まる傾向もあります。

しかしその分、広告はPRに比べてより正確なターゲット層にアプローチをすることが出来ます。

情報発信する上での施策の自由度が高く、以下のようなメリットがあります。

・広告を配信する量を決められるため、売り上げに大きく繋がる広告は多く、そうでない広告は少なく表示させられる

・いつでも広告を配信・停止出来るため、適切な時期に情報を出せる

・料金さえ出せば広告を載せられるので、最も適切なメディアに広告を出せる

・ABテストで広告クリエイティブの効果検証が出来る

⇒ABテストによるバナー広告の効果改善法についてもっと知りたい方はこちら

バナー広告で効果を上げていきたい方必見!クリエイティブの改善方法

♦PRの場合

PRというのは、媒体に料金を出さずに情報発信が出来るのです。1円すら使わずとも、発信したい情報に第三者であるメディアが興味を持ちさえすれば、テレビや雑誌、新聞などで、インタビューや製品レビュー、開催イベントのレポートといった様々な形のメディア露出で情報を拡散してもらうことが出来ます。情報番組で輸入車の新機能が紹介されたり、楽器開発企業の社長が会社設立までの経緯を雑誌で語るのは、第三者である番組ディレクターや雑誌編集部の記者などが、企業が提供した情報に価値を見出した結果です。「価値のある情報だ」と企業ではなく第三者が判断するので、企業は無償で公衆にメッセージを伝えるだけでなく、広告に比べて公衆からの信頼を得やすい傾向があります。

一見良いことづくしに感じるPRですが、メディアの興味を引き付けないと情報は拡散されません。提供する情報に話題性、流行性、時事性が欠けていたり、メディアのターゲット層が求める情報でないと見なされた場合は、パブリシティの獲得が困難になります。

上記に加え、PRには以下のデメリットを持つ場合もあります。

・情報がどのように報道されるかを制御出来ないため、炎上や批評の可能性が高まる

・メディア編集部には日ごろから多くの情報が流れるため、送った情報を確認してもらえない

・露出時期はメディアのスケジュールに左右されるので、情報の発信時期をコントロール出来ない

・狙った媒体に必ずしも露出が出来ないため、正確なターゲット層へのアプローチが難しい

要約すると、広告はメディアに料金を払い、情報発信の施策のコントールが効き、PRは無料で情報を第三者であるメディアに拡散してもらえるが、報道のされ方は保証出来ないというのが違いです。

5. まとめ

いかがでしたか?最後に、広告とPRの違いを整理してみましょう。

♦広告の場合

・商品やサービスの売り上げを向上させることに向いている

・発信する情報は、ターゲット層の共感を得て、特定の行動を引き出すように構成する

・発信する情報は、メディアに料金を払うことで届く

・好きなタイミングで情報を発信出来る

・情報発信における施策の自由度が高い

♦PRの場合

・会社やブランドのイメージを管理することに向いている

・発信する情報は、正しく簡潔に、そして伝わりやすく構成する

・情報発信をするのは自分ではなく、第三者であるメディア

・提供した情報にメディアが価値を見出せば、無料で世間に情報を公開してくれる

・好きなタイミングで情報を発信するのが難しい

・情報発信における施策の自由度が低い

広告とPRのどちらででも売り上げ向上やブランドイメージの管理は出来ますが、それぞれで得意分野が異なり、マーケティング目標によって手段を選ぶ必要があります。

広告は好きな時に情報を流せるうえに効果検証がしやすいという利点があります。そのため、商品やサービスの購入、問い合わせ数を上げたい場合に向いており、短期間で成果を出すことも出来ます。

それに対しPRは、ブランドイメージをコントロールする手段として適しています。しかし、メディアに情報拡散をしてもらう前提があるため、メディアに取り上げてもらえるメッセージの構築、そしていつメッセージを流すかが媒体露出の成功に大きく影響します。

上記を理解したうえで、広告とPRのどちらの手段をマーケティングに取り入れるかを判断するのが大切です。