No1にならなくても良い!ビジネスモデルを理解することで得られるもの

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さて、マーケティングを考えていくうえで最も重要ともいえる要素が

ビジネスモデルの理解

です。

ビジネスモデルを理解していなければ、そのマーケティングにとって何が効率の良い施策なのか判断することはできませんし、ひとつひとつの戦略が部分最適化されてしまい、

「あれ?結局何のためにやっているんだっけ・・・??」

ということになってしまいます。

ところで、今更ではありますが、
ビジネスモデルとは何でしょうか。
マーケティングを担当する方であれば、わりとよく頻出する単語ですので、
日常会話で使っている方も多いかと思いますが、

「改めてその意味を考えてみると明確に答えられない、、、」
「ビジネスモデルの理解ができているのか不安、、、」
「競合他社のビジネスモデルをもっと深く知るためにはどうすればいいか知りたい」

なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はそんな方と一緒に、ビジネスモデルの考え方について考えていきたいと思います。

ビジネスモデルの考え方を理解すると、自社に今求められている戦略や実施しているマーケティング施策の良し悪しだけでなく、競合他社の動き方までも見えてくるようになるはずです。

是非一度、参考にしてみてください。

【目次】

  1. ビジネスモデルとは
    • 混同されがちなマーケティングとの違い
    • ビジネスモデルの理解から得られるメリット
  2. ビジネスモデルを俯瞰するためのポイント
    • 顧客層
    • 商材
    • タッチポイント
    • 外部利益
  3. ビジネスモデルを可視化するビジネスモデルキャンバス
  4. まとめ

➀ビジネスモデルとは

ビジネスモデルとは、

『その事業が継続して収益を上げていくための構造』

になります。

ビジネスモデルは、偶発的な収益ではなく、継続的に収益を上げていくための構造、
もしくは、事業を継続させるために必要なものを構造的に表したものです。

◆混同されがちなマーケティングとの違い

「ビジネスモデル」を『その事業が継続して収益を上げていくための構造』として考えていくと、「マーケティング」という用語と混同されてしまう方も多いのではないでしょうか。

マーケティングは、

モノやサービスが継続的に売れていくための仕組みづくりを指す言葉になります。

マーケティングでは、

顧客はどのようなニーズを持っているのか、
顧客のニーズに対してどのように商品を届けるか、
顧客との接点をどのように創出していくか、

このように顧客との関係性を起点に、モノやサービスの在り方を考えていきます。

一方で、ビジネスモデルは収益を生み出すための構造ですので、顧客との接点という視点だけでなく、そのモノやサービスの仕入れや運搬、はたまた事業のキャッシュフローや外部パートナーとの連携など、事業の取り組み全体を考えていきます。

「マーケティング」も「ビジネスモデル」もどちらも事業を継続していくためには欠かせない考え方ですが、「ビジネスモデル」はより上位の概念といえるでしょう。

ビジネスモデルは、《誰に何をどう売るか》という戦略だけでなく、それを実現させるための社内組織(資源:リソース)の在り方や、社外との連携などを含めて俯瞰的に見る概念になります。ビジネスモデルを先に理解しておくことで、より実現性の高いマーケティング戦略を策定していくことが可能になるといえるのです。

ビジネスモデルとマーケティング戦略の関係

◆ビジネスモデルの理解から得られるメリット

ビジネスモデルを理解することで以下のようなメリットが得られます。

・自社、他社の取り組みを構造的に理解することで、比較や分析が容易になる

自社のビジネスモデルを、他社と比較したりすることで、新しいリソースの発見や、新しいマーケティングの切り口の発見に繋げることができます。表面的なマーケティング施策だけでなく、収益の発生フローや外部パートナーとの関係性まで構造化することで、他社にはまねできない強みを可視化し、SWOT分析などにも役立てることもできます。

・今抱えている課題や問題を可視化しやすい

他社での成功事例をそのまま、自社に持ち込んだとしても、うまくいくとは限りません。それはビジネスモデルが異なるからに他なりません。今抱えている問題に対して、1度ビジネスモデルから構造を理解しなおすことで、ボトルネックとなっている箇所を特定することができます。

・外部のステークホルダーとも共通の認識(コンセンサス)を持つことができる

ビジネスモデルの理解は経営層にとって必要なだけでなく、自社の従業員や外部の取引先など、ステークホルダーとの連携を強化するためのコミュニケーションツールとしても有効です。例えば、ビジネスモデルを理解しないマーケティング施策では事業全体にとって有益といえる成果を出すのは難しいかもしれません。外部の広告代理店などとビジネスモデルの理解を共有しておくことで、それぞれの施策の部分最適化を防ぐことができます。

このように、ビジネスモデルの理解はこれから事業を立ち上げる場合だけでなく、既存の事業を理解するうえでも必要な考え方になります。ビジネスモデルを明確にしておけば、社内の経営層と従業員のコミュニケーションが円滑になるだけでなく、外部の取引先とも共通認識をもって事業に取り組むことができ、より効率的に事業を進めることができます。また、競合とのビジネスモデルを比較することで、他社には真似できないマーケティング施策を打つことが出来るかもしれません。

ビジネスモデルを理解することは、SWOT分析をより深化させ、参入障壁を高めるアイデアを生み出す土壌となるといえるでしょう。

②ビジネスモデルを俯瞰するためのポイント

ビジネスモデルを理解することが重要であるということはわかっても、どのように理解していけばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

ここではビジネスモデルを理解するためのポイントを見ていきましょう。

ビジネスモデルを理解するには、目に見えるマーケティングだけを紐づけるのではなく、目に見えない関係性まで考えていく必要があります。目に見えない関係性を考えて、ビジネスモデルを理解することは、自社のマーケティングを成功させるためだけでなく、競合他社の動きを分析するのにも役立たせることができます。

◆ビジネスモデルを俯瞰するために重要な4つポイント

・顧客層
・商材
・チャネル
・外部利益(利益はどこで発生するのかだけでなく、だれの利益になっているかも考える)

ビジネスモデルを理解するにはこれらの4つの視点で考えていくとよいでしょう。

・その事業のターゲットなっている顧客層は誰か。

まずその事業の顧客は誰なのかを明確にしておく必要があります。これは年齢や性別といった属性データに基づくセグメントだけでなく、どのようなニーズをターゲットとしているのかといったニーズウォンツレベルまで掘り下げて考えていくとよいでしょう。また、同じ商品やサービスに対してでも利用シーンが違う場合もあります。

細かくセグメント化して、どの顧客層をターゲットとして、どの顧客層がターゲットとなっていないのかを明確にして行きます。

・その事業はどのようなサービス価値を提供しているのか。

細かくセグメント化されたターゲットの顧客に対して、どのようなサービス価値を提供しているのかを見ていきます。商品名や一般的なサービス名を抑えるだけでなく、そこから深堀していき、そのサービスが顧客にとってどのような価値になっているのかを考えていく必要があります。顧客にとって価値がなければ、サービスを継続的に利用してもらうことは難しいからです。企業が提供していると自分たちで認識している価値と顧客が実際に感じている価値に乖離がある場合もありますので、セグメントごとに受け取っているサービス価値を見ていきましょう。

・その事業は顧客に対してサービス価値をどのように提供しているのか

サービス価値を顧客にどのように届けているのかを見ていきます。プロモーション方法から、販売チャネル、アフターサービスなど、ターゲットとなる顧客セグメントに対してどのようにサービス価値を届けているのか。店舗型やオンライン型など、顧客セグメントが異なれば最適なチャネル設計が異なってきます。

・その事業はどのように利益を生み出しているのか。

ビジネスモデルとは、『その事業が継続して収益を上げていくための構造』のことですので、利益を生み出しているポイントがどこにあるのか理解することは、ビジネスモデルを理解する上で最も重要な点であるといえます。サービスの対象となる顧客が直接対価として金銭の支払いをしていないビジネスモデルも多く存在していますので、どのようなビジネスモデルがあるのか様々な業界の収益構造を知っておくと良いでしょう。

また、収益構造を理解するうえで重要なのは、企業が得る利益だけでなく、外部利益として収益構造を把握することです。例えば、グループ会社との関連性や株主構成などを見ることで、その事業を誰が継続させたいかが見えてきます。外部利益を把握することで、ビジネスモデルをより俯瞰することが出来るようになります。同じ顧客層に対し同じサービス価値を同じチャネルで提供していたとしても、外部利益の構成が異なることで取るべき戦略(取れる戦略と取れない戦略)が異なる場合があります。その企業の外部にまで目を向けることで、ビジネスモデルをより俯瞰的に分析し競合他社との差別化などに役立てることが出来ます。

③ビジネスモデルを可視化するビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルについてもっと深く考えていきたいという際には、ビジネスモデルキャンバスというフレームワークを活用すると良いでしょう。ビジネスモデルキャンバスは、既存のビジネスモデルの分析や新規に事業を立ち上げる際にビジネスモデルを考えたい際に役立つフレームワークです。

ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルを9つの構成要素に分解して考えていきます。要素ごとに分析していくことで、参入障壁を構築するような自社の強みや、同じ業界に位置している競合他社との違いなども可視化していくことが出来ます。

ビジネスモデルを理解するためのビジネスモデルキャンバスのテンプレート(9つの要素)

ビジネスモデルキャンバスの構成要素

1.顧客セグメント:Customer Segments(CS)
2.提供価値:Value Propositions(VP)
3.チャネル:Channels(CH)
4.顧客との関係:Customer Relationships(CR)
5.収益の流れ:Revenue Streams(RS)
6.リソース:Key Resources(KR)
7.主要活動:Key Activities(KA)
8.パートナー:Key Partnerships(KP)
9.コスト構造:Cost Structure(CS)

◆ビジネスモデルキャンバスの9つの構成要素

それでは、ビジネスモデルキャンバスを構成する要素がどのようなものなのかを見ていきましょう。

1.顧客セグメント:Customer Segments(CS)

顧客セグメントでは、商品やサービスの対象となるユーザーが誰なのかを纏めていきます。

顧客セグメントを決めていく際には性別や年齢などの属性情報だけでなく、利用目的を明確にすることが重要になります。

「○○に困っている人」
「○○を解決したい人」

このようにニーズを明確にしていくことで、商品やサービスの内容やそのマーケティング方法などをより具体的に考案していくことが出来るようになります。

2.提供価値:Value Propositions(VP)

提供価値では、1で定めた顧客セグメント・ニーズに対して、「どのような商品サービスの価値を提供するのか」を纏めていきます。

価値提案では、単に商品やサービスの名前を挙げていくだけでなく、その商品がそれぞれのセグメントの顧客にとってどのような価値になっているのかまで深堀して考えていく必要があります。

「なぜ自社の商品を選んでくれるのか」

まで深堀していくことで競合他社との差別化要素も見えてきます。

特に、既存の事業の場合は、企業が提供していると感じている価値と、ユーザーが実際に感じている価値に差異がある場合があります。顧客の視点からどのような価値が提供されているのかをまとめていくと良いでしょう。

3.チャネル:Channels(CH)

チャネルでは、1で定めたセグメントの顧客とのコミュニケーションをどのチャネルを通じてとるのか、どのように価値を届けるのかをまとめていきます。

チャネルでは

・サービスを提案するための物流チャネル
・広告を含むマーケティング全般のコミュニケーションチャネル

「店舗型のサービスなのか、オンラインショップ型のサービスなのか」や「顧客とのコミュニケーションにはどのような媒体を使ったらよいのか」

など、これらを整理していきます。

4.顧客との関係:Customer Relationships(CR)

顧客との関係では、どのように顧客との関係を“構築”するかを纏めていきます。

チャネルでは、場所や媒体(メディア)を定義しており、そのチャネルを通じてどのように繋がっていきたいかという関係の手段を考えていきます。

また、「対面なのか、セルフサービス型なのか」など、タッチポイントごと顧客との関係の他に、時間的な関係性も考える必要があります。コンサルティングのような長期の関係性なのか、売り切り型のサービスのような短期の関係性なのかなど、顧客との関係性は事業の維持・拡大に直結しています。

5.収益の流れ:Revenue Streams(RS)

収益の流れは企業が顧客から得るお金の流れになります。

顧客に対しては無料で提供されているサービスなどもあるので、実際には顧客は何に対してお金を払っているのかを明確にしていきます。また、売り切り型の商品のように販売したタイミングで収益化させるのか、サブスクリプションプリペイドなどのような課金形態かも可視化していきます。

BtoBの事業の場合にはライセンスなども該当します。

6.リソース:Key Resources(KR)

リソースとは、ここまで纏めてきたビジネスモデルを成り立たせるために必要な経営資源(資産)のことです。店舗や工場などの資産だけでなく、能力やスキルなどの人的資源やノウハウや知的財産も事業を継続させるための重要な要素になります。リソースは自社で所有していなくてもパートナー企業から提供される場合もあります。

7.主要活動:Key Activities(KA)

主要活動とは、事業を成立させるために必要な活動となります。

製造、販売、採用、プラットフォームの構築など、その事業を継続的に成立させていくために必要な具体的な事業内容を纏めていきましょう。

8.パートナー:Key Partnerships(KP)

パートナーでは、ビジネスモデルを構築するうえで必要なパートナーを書き出していきましょう。リソースやノウハウの提供をもしてくれるビジネスパートナーの違いは、そのまま競合他社との差異になります。差別化要素を強化するためにもパートナーの選別が重要になります。

注意したいのは、広告モデルのようにユーザーとなる顧客と広告の掲載企業の両方からお金をもらっている場合に、企業側をパートナー、個人ユーザーを顧客セグメントとするのではなく、どちらも顧客セグメントに記載したほうが良いということです。パートナーはビジネスモデルに必要なリソースの提供や自社に足りないノウハウを補ってくれる外部の重要な存在になります。

9.コスト構造:Cost Structure(CS)

コスト構造では、事業を運営していくために発生する費用を纏めていきます。

固定費変動費を分けてコスト構造を把握し、利益を生み出せるビジネスモデルかどうかを検討します。

固定費には、地代や人件費など販売量によって変化しない費用が該当し、変動費は販売量によって増減する原料費などの費用が該当します。

④まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はビジネスモデルの理解についてまとめさせていただきました。ビジネスモデルの理解は経営層だけがしていればいいやというものではなく、マーケティングを効率的に進めていくためには従業員や外部のステークホルダーなどにも理解してもらうことが重要になります。

マーケティング担当者である場合には、自社のビジネスモデルを理解することはもちろんのこと、競合他社のビジネスモデルを理解しておくことも重要です。テレビのCM広告や目につきやすいインターネット広告といった、部分的なマーケティングだけでは競合のビジネスがうまくっているのかどうかはわかりません。ビジネスモデルを俯瞰してみて、その中でマーケティングがどのように機能しているのかを考えることで、その広告がどのような影響をもたらすのか知ることができます。またそこから、次の戦略を立てることが容易にできるようになるかもしれません。

また、広告代理店を選ぶ場合にも、このビジネスモデルの理解がその後の成果を左右する重要な要素になってくるといえます。広告代理店がビジネスモデルの理解をしていないと、広告の運用が部分最適なマーケティング施策にしかなりません。企業が抱える課題を構造化してとらえることができなければマーケティング施策を効率的に組み立てることはできないからです。

もし、自分たちのビジネスモデルにあったマーケティング施策がわからない、競合他社と差別化していようなマーケティングをしていきたいとお悩みの際は、是非ご相談ください。