広告枠とクリック単価(CPC)も突き詰めれば経済学の仕組みである。

インターネット広告を活用している方であれば、

CPC:クリック単価= 費用 ÷ クリック数

と数式で覚えられている方も多いのではないでしょうか。

しかし数式を理解しただけでは、実際の市場動向の分析や予測まで落とし込むことは難しいかもしれません。そこで、今回はより根本的な経済学の仕組みでクリック単価をわかりやすく解説したいと思います。

インターネット広告のクリック単価はどのような要素で決まっているのか。

分かっているけどもっと根本的な課題を突き詰めたいと考えている方は是非参考にしてみてください。

「ディスプレイ広告はクリック単価が安いけどなぜだろう・・・」
「キーワードごとの大まかなクリック単価を知りたい・・・」
「セグメントが細かすぎて試算通りのCPCにならない・・・」

これらの素朴な疑問や悩みは、実は単純な経済学で説明できたりします。

単純なことで当たり前のことですが、
この仕組みを理解していないと、
無理なマーケティング施策を展開してしまうというケースにもなりかねません。

広告枠とクリック単価(CPC)という根本の仕組みを理解することで、ウェブマーケティング全体の効率化につなげることもできますので是非参考にしてみてください。

【目次】

  1. 広告が表示される広告枠はどこにあるのか
  2. 広告枠という供給と広告掲載という需要
    • 需要と供給の関係で決まる市場価格
    • 供給量により市場価格は変動する
    • 広告枠という供給と広告掲載という需要
  3. ターゲティングを設定するとクリック単価は上昇する
  4. 実質的なクリック単価(CPC)はどのように決まっているのか
  5. まとめ

広告が表示される広告枠はどこにあるのか

突然ですが、問題です。

・日本で1番乗降客数が多い新宿駅から見える看板広告
・1日の乗降客数が100人に満たないようなローカル線駅前の看板広告

どちらの方が広告の掲載料金が高いでしょうか。

一般的に言って、多くの人の目に付く広告枠の掲載料金は高くなり、人目に付かない広告枠であれば掲載料金は安くなります。

看板広告などをはじめ広告が掲載されている広告枠は、人が集まり多くの人に見られている広告枠であれば、そこに広告を掲載したい広告主が多く現れるため、その広告枠の掲載料金は高くなります。逆に、人が集まらないところにあり、あまり人に見られていない広告枠であれば、そこに広告を掲載したい広告主はあまりいないので、その広告枠の掲載料金は安くなります。

このように、「広告枠はどこにあるのか」ということによって、その価値は大きく変わってきます。広告枠に広告を掲載するための掲載料金はこの広告枠の価値を表しているといえ、経済学の仕組みで説明することが可能です。

広告枠という供給と広告掲載という需要

広告枠と広告の掲載料金の関係は、経済学の需要と供給の関係で表すことが出来ます。

先ほどの例で言うと、

【供給】
・広告枠が多い  = 供給量が多い
・広告枠が少ない = 供給量が少ない。

【需要】
・広告を掲載したい広告主が多い  = 需要量が多い
・広告を掲載したい広告主が少ない = 需要量が少ない

と表すことが出来ます。

それでは、この需要と供給をもとに市場価格がどのように決まるかをもう少し細かく見ていくことにしましょう。

◆需要と供給の関係で決まる市場価格

皆さんも、

「人気店のスイーツは値段が高いのに、どこでも買えるコンビニのスイーツはそんなに値段が高くない・・・」

と言うように、実生活の中で体感はしているかと思いますが、
その需要と供給の関係を図で書くと下記のグラフのようになります。

需要曲線と供給曲線の交点が均衡価格

需要曲線は価格が高いほど需要は少なく、価格が低くなるほど需要は多くなる右下がりの曲線で表すことが出来ます。

一方の供給曲線は、価格が低ければ供給量は少なく、価格が高ければ供給量は多くなる、右上がりの曲線で表すことが出来ます。

この二つの需要曲線と供給曲線が交わる点が市場の均衡価格となります。

需要量より供給量が多い場合には、均衡価格まで価格は下落していきます。

逆に需要量よりも供給量が少ない場合には、均衡価格まで価格は上昇していきます。

◆供給量により市場価格は変動する

次に供給量が増加した場合には、市場価格はどうなるのでしょうか。

供給量の増加による供給曲線のシフトと均衡価格の変化

供給量が増加すると、供給曲線は右側にシフトするので均衡価格は供給量の増加前に比べて下落します。

※価格pでの供給量が増えると、供給曲線はSからS’へと右側にシフトするので、需要曲線Dとの交点である市場均衡価格PはP‘へと下落します。新しい均衡点P’では、下落前の均衡点Pと比べ、価格Pは下落し、量qは増加しています。

逆に供給量が減少した場合には、市場価格はどうなるのでしょうか。

供給量の減少による供給曲線のシフトと均衡価格の変化

供給量が減少すると、供給曲線は左側にシフトするので均衡価格は供給量の減少前に比べて上昇します。

※価格pでの供給量が減ると、供給曲線はSからS’へと左側にシフトするので、需要曲線Dとの交点である市場均衡価格PはP‘へと上昇します。新しい均衡点P’では、上昇前の均衡点Pと比べ、価格Pは上昇し、量qは減少しています。

このように市場価格は、供給量の増減によって変動します。

◆広告枠という供給と広告掲載という需要

インターネット広告の広告枠も、基本的にはこれと同じ原理で動いています。インターネット広告もウェブサイトやアプリ上に無尽蔵に表示できるのではなく、ウェブサイトやアプリ上に広告枠というコードが設置されており、その広告枠がブラウザ上に読み込まれることで、アドサーバーから配信される広告を表示させることが出来ます。

Googleディスプレイネットワーク(GDN)Yahoo!ディスプレイ広告(YDA)に代表されるディスプレイ広告では、アドネットワーク上に無数のサイトやアプリの広告枠が繋ぎ込まれており、大量の在庫を供給しているため、広告のクリック単価は比較的、低単価で配信することが出来ます。逆に、検索連動型広告(リスティング広告)では広告の配信対象となるキーワードが限定されているので、広告枠の供給量が少なくなってしまうため、ディスプレイ広告にくらべ広告のクリック単価は高騰しがちになってしまいます。

③ターゲティングを設定するとクリック単価は上昇する

ディスプレイ広告では、広告枠の在庫量が豊富にあるため、比較的クリック単価が安くなりやすいと述べましたが、そんなインターネット上に広告枠が大量にあるディスプレイ広告でも、価格が上昇してしまうことがあります。

このことは、ユーザーのサイト流入目的のディスプレイ広告を活用していることの多い広告運用の担当者の方ですと、違和感をおぼえるかもしれません。

「特定のページのリマーケティング広告は全ページのリマーケティング広告よりCPCが高い・・・」
「性別・年齢・趣味嗜好を限定したセグメントのCPCが高くなるのは何故・・・」

このような疑問は、ターゲティング設定を細かくしてユーザーセグメントを限定してしまう場合によく起こり得ます。ユーザーセグメントを限定することは、広告配信の対象となる広告枠を限定することになりますので、ユーザーセグメントを細かく限定した広告への広告枠の供給が、セグメントを指定しない場合の広告枠の供給に比べ減少することになります。

上述での供給量の減少による価格変動の図が示しているように、供給量が減少すると、供給曲線は左側にシフトするので均衡価格は減少前に比べ上昇します。

供給量の減少による価格の上昇

このように、本来クリック単価の安いディスプレイ広告であってもターゲティングセグメントを細かく設定するとクリック単価を上昇させてしまうことがあります。場合によっては検索連動型広告(リスティング広告)よりも単価が高くなってしまうこともありますので、ディスプレイ広告のクリック単価が高いなと思った際はターゲティングを狭めすぎていないか是非確認してみてください。

ここまでは、ターゲティングセグメントを限定したことによる供給側の変化によるクリック単価への影響を見てきました。

ここからは需要側からのクリック単価への影響を見ていきたいと思います。

需要側からのクリック単価への影響を見ていく前に、まずはインターネット広告でクリック単価がどのように決定されているかを見ていきましょう。

④実質的なクリック単価(CPC)はどのように決まっているのか

リスティング広告やディスプレイ広告などをはじめとするインターネット広告では、多くの場合広告オークションによってクリック単価が決められています。ウェブサイトやアプリ上に存在する広告枠が読み込まれるたびに、広告オークションが行われ広告の掲載順位とその広告枠に掲載するためのクリック単価が決定されます。

※広告オークションでは、広告ランクというものが用いられているため、単純に入札価格が高い広告が高い掲載順位を毎回獲得できるというわけではありません。

⇒広告オークションについて、もっと詳しく知りたい方はコチラを参照ください
リスティング広告の掲載順位を決める《広告ランク》ってなに?

⇒実際に支払うクリック単価について、もっと詳しく知りたい方はコチラを参照ください
リスティング広告のクリック単価(CPC)はどう決まっているの?

広告オークションでは広告ランクというもので掲載順位やクリック単価を決定していますが、ここでは話を簡単にするため、入札価格に置き換えて話を進めたいと思います。

一般的には、インターネット広告での掲載料金の決定も冒頭の看板広告の事例と同様に、その広告枠に掲載したい広告主が多ければ、広告の掲載料金(クリック単価)は上昇し、競合が少ない広告枠の広告の掲載料金(クリック単価)は安くなるといえます。

※運用型のインターネット広告の掲載料金は多くの場合、クリック単価で支払われます。クリック単価制での支払いの場合、広告が表示されるだけでは、掲載料金は発生せず、クリックされたタイミングで料金が発生します。インターネット広告にはこれとは別に表示期間や表示回数が保証されている《純広告》があります。純広告の場合も経済的な原理原則は同じです。掲載期間や最低保証表示回数(広告が表示される回数)が決められている純広告では、会員数の多い会員サイトや月間のページビュー数が多いメディアサイトなどで広告掲載をしたい競合が増え掲載料金が高くなります。

◆広告枠に対する需要が価格を決定する

同一の広告枠に対する競合の多寡は、下記のように言い表すことが出来ます。

【需要】
・広告を掲載したい広告主(競合)が多い  = 需要量が多い
・広告を掲載したい広告主(競合)が少ない = 需要量が少ない

需要量が増加した場合、需要曲線は右側にシフトし、市場均衡価格は上昇します。

つまり、1つの広告枠に対し季節的な要因などで参入する競合などが増え、需要量が増加すると需要曲線は右側にシフトすることになり、価格は上昇することになるのです。

需要量の増加による需要曲線のシフトと均衡価格の変化

※価格pでの需要量が増えると、需要曲線はDからD’へと右側にシフトするので、供給曲線Sとの交点である市場均衡価格PはP‘へと上昇します。新しい均衡点P’では、上昇前の均衡点Pと比べ、価格Pは上昇し、量qは増加しています。

逆に、需要量が低下すれば需要曲線は左側にシフトすることになり、価格は下落します。

需要量の減少による需要曲線のシフトと均衡価格の変化

※価格pでの需要量が減ると、需要曲線はDからD’へと左側にシフトするので、供給曲線Sとの交点である市場均衡価格PはP‘へと下落します。新しい均衡点P’では、下落前の均衡点Pと比べ、価格Pは下落し、量qは減少しています。

このように需要曲線のシフトが市場価格を変動させます。

広告枠に対する需要も同様で、競合が多ければ広告枠に対する需要が多いということになり、価格は上昇し、逆に競合が少なければ、需要が少ないということになり、価格は低下していきます。

③まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回はインターネット上に無数にある広告枠とそこに表示される広告枠の仕組みをご紹介させていただきました。実質的な広告のクリック単価は競合とのオークションによって決定されます。しかし、そのクリック単価が高いものなのか低いものなのかという基準は、経済学の原理原則に基づいており、下記の要素に表されます。

【クリック単価を決める基本的な要素】
◆広告枠の供給量
・メディアでの広告枠の表示回数(インプレッション数)
・セグメントのユーザー数大きさ
・検索ボリューム※検索連動型広告の場合

◆同じ広告枠(同じターゲティング)に対する需要量
・競合数

【経済学の原理原則】
広告枠が需要に対し多ければ供給は多くなり、価格は低下します。
逆に、広告枠が需要に対し少ないのであれば供給は逼迫し、価格は高騰します。

この原理原則を抑えておくことで、施策ごとの配信のイメージをしやすくなるのではないでしょうか。

また、ターゲティングを設定する場合は、他のターゲティングとの関係性やクリック単価の設定のイメージもつきやすくなります。

需要と供給の関係は経済学の基本的な原理原則ですが、
広告枠とクリック単価の関係もこの原理原則で説明することが可能です。

基本的な構造を理解することが、より複雑なマーケティング戦略の設定に役立ちますので是非参考にしてみて下さい。